ショー

2013.05.19 TEXT


 三十分三千円の覗き部屋、マジックミラーだらけの狭い室内でソファに掛けた若い男がけだるげに股を開いている。部屋から客は見えないが安普請だから気配はする。部屋に入って五分、若い男は下着一枚になっている。三十分でとりあえず客を満足させるため時間を配分しなければならない。パンツ姿で室内をうろうろし、そのあと尻を使った自慰でもしよう、と若い男は考える。イけなくても別に構わない、どうせ借金完済までのバイトなんだから適当でいい。
 と、部屋のドアが開き、黒コートの覆面男が入ってくる。こんな仕込みは聞いていない。若い男は、なんだァてめー、とわめいて立ち上がり、机上にあったガラス製の灰皿をつかんで覆面男を追い出そうとする。ぶん、ぶん、と振り回される灰皿を避けた覆面男は上体を倒しざまに片脚を振り上げ、若い男の首に回し蹴りを入れる。体をぐらつかせた若い男はそれでも灰皿を振り回すが、動きは鈍く、すぐに灰皿も叩き落されてしまう。覆面男は若い男の髪をつかむとさっきまで若い男が使っていたソファに相手を組み敷き、抵抗する相手の腹を殴ると片手で首を絞める。もう片手は若い男の尻をつかんでおり、太い指がぴっちりと貼りつく布をかきわけて尻の割れ目にめりこんでいく。仕事のためにあらかじめ準備をしておいた肛門は、持ち主の意思とは裏腹に覆面男の指を飲み込んでしまう。若い男は口を大きく開けるが、つぶれた喉からはかすれた罵声が漏れるだけだ。
 体内を執拗に探られるうちに若い男は再び声を出すが、ミラー越しの客たちはそれを嬌声と判断する。今や若い男の性器は膨らんで薄い下着を突き上げている。覆面男は相手の尻から指を抜き、その薄い布きれを無造作に引き降ろして若い男の半勃ち性器をきつくしごき始める。びゅっと体液が宙に飛び若い男がのたうつ。そのうち指よりだいぶ太いものが尻の間に侵入してくる。覆面男の黒コートの下は全裸であった。肛門にみっちりと太い棒を埋められてしまった若い男は喉を解放されても叫ぶことができず、貫かれたまま体の向きを変えられ、覆面男に背を、客に顔を向ける。けわしく歪んだ顔は揺すぶられる間に徐々に弛緩する。眉が上がり、まぶたが落ち、だらしなく開いた唇からは唾液が流れる。
 しばらく腰を振るった覆面男は、一息つくと、おとなしくなった相手の体を抱えて部屋の真ん中に据えられたベッドへ移動する。衆目の中、大きな手でつかまれたうつぶせの腰が持ち上げられ、不気味なほど嵩高い黒い器官が再び若い男の体内へ入っていく。若い男がヒーと声を上げ、腰をよじる。紅く染まった丸い尻が左右に振られるが、覆面男が器官をずっぽりと収めてしまうと動きは止まり、あとは覆面男の独壇場となる。お決まりのピストン運動、発射。そのまま抜かずに若い男を転がし、横からのピストン運動、発射。覆面男の肩に担がれた片脚が一度力んでピンと伸びるが、そのあとはぶらぶらと揺れるばかり。
 最後に覆面男は若い男を横抱きにし、それぞれのマジックミラーの前まで運んで成果を披露する。容姿で惹きつけておきながらいつもサービス不足で客を苛立たせていた若い男が、今日は精根尽き果てて尻から粘液をしたたらせる。客は満足し、超過料金が惜しみなく支払われる。興行主は覆面の下の頬を緩める。若い男の被虐性は客だけではなく興行主も満足させた。これを開発して仕込めば儲かるだろう、万一客に受けないときは自分専用にすればいい、などと思いを巡らせる。ナンバーワンになった若い男を独占できないことで未来の自分が悩むことになるとは予想だにしていない。









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