せっかくの機会

2009.09.08 TEXT




狭いユニットバスのバスタブの中で角都にいたぶられながら飛段は声を絞り出す。もう、やめろ、やめろ。ダンゴ虫のように丸めた体を白いプラスチックの箱の隅にギチギチと押しつけられ背後から串刺しにされた飛段の声はつぶれて、おう、おお、おお、と響く。角都の体は重くその上にのしかかり、ぬるりぬるりとくねるように動いて、飛段の体をさらに不自然な形に折り曲げる。苦しさのあまり持ち上げた頭を背後から掴まれた飛段は、顎を突き出して喉を反らし、ヒー、と呼吸する。そのタイミングで角都が遊ぶように腰を突き上げる。ヒー、プチャッ、ヒー、グチャッ。局部への刺激ではなく無理な姿勢のせいで飛段はだんだん朦朧としてくる。こわばっていた背骨がぐにゃりと歪み、折り曲げられていた脚が開いて股が床に密着するようになると、角都は相棒をひっくり返して狭い箱の中に仰向けに寝かせ、その重たい両脚をバスタブのふちに乗せて、自分は開かれた股の間に膝をつく。そこでいったん角都は振り返り、タオル用の棚に目立たぬように置かれた盗撮カメラを確認する。飛段のシングルにばかりトイレの紙やらタオルやらを運びこんでいた従業員の顔は覚えている。用事がすんだらあの男を締め上げなくては。ホテルにクレームをつけて賠償金をせしめることも忘れてはならない。無論カメラは没収だ。カメラのフレームに飛段だけがおさまるよう、今度は手だけで相棒を弄びながら角都はニタリと笑う。忙しい夜になりそうだった。
















Secret

TrackBackURL
→http://ecrits2.blog.2nt.com/tb.php/13-ccc3263a