秘めごと

2009.12.30 TEXT



こいつはまだ二十二歳だったな、道理で元気なわけだ、と角都は考える。昔のことは知らないが、角都が出会ったころの飛段はまだ自慰もうまくできないようなガキだった。ちゃんとした性のことわりを知らないまま異常なやり方に慣らされてしまい、下品なラブホテルに男二人で入ることにも殴られながら抱かれることにも疑問を持たない飛段は、本人がそのつもりになれば大変な商品価値を持つに違いない。その得難い相棒を手ひどく扱った角都は、一通りの行為が済んでからも鼠を弄ぶ猫のようにしつこくちょっかいを出しては相手の反応を見ている。もうよせよ、と飛段が割れた声で訴える。テメー調子こいてんじゃねーぞ、と続けられた言葉は先端をつままれたことで途切れ、ヒュッという呼吸音にすり替えられる。こんな不利な状況で文句をつけるとは本当に愚かな奴だな、と角都はほくそ笑みながら言ってやる。いったばかりのここは感じやすい、違うか飛段。ぬるつく器官をいじられた飛段は相手の手を己から引き離そうとしながら顔を歪めたが、爪を立てられるとギーと言って体を弓のように反らせた。自分がどんなに淫らな格好をしているかわからないのだろう。シーツの上でゆるくブリッジした飛段の太腿が誘うような角度で開いている。片手で性器を手荒になぶり続けながら角都はもう片手で飛段の内腿を何度も撫で上げる。腰が上がっているせいで角都の指は腿を這い上がるたびに容易に飛段の尻の間に滑り込む。さっきまでそれなりに広がっていた尻の穴は侵入を許すまいと緊張するが、角都は巧みに指をねじ込み、相手の弱点をくすぐるように指先を動かした。飛段のブリッジが高くなり、くうう、と苦しげな声が漏れる。腰が揺れるのは指から逃れようとしているのだろうが角都にとっては良い見物だ。やがて腰を振りながら自分の下腹と太腿を汚した飛段はぺたりと尻をシーツに落としたが、その際に中を角都の指で強く押されてしまい、珍しく大きな嬌声を上げた。よほど良いところを突かれたのか名残のように切れ切れに射精した末、動かなくなった体を角都はつねったり叩いたりしてしばらくいじりまわしていたが、何をしても覚醒しないことを確信すると扱いを変え、それなりに体格の良い男である相棒を胡坐の上に丁寧に横抱きにした。ぐらつく頭を自分の胸と腕で支えると乱れた髪を指で梳いて整え、鼻血を舐め取り、切れた唇を舌でなぞる。半分開いたままの瞼にも唇を押しあてる。本末転倒だと角都は自覚している。優しく愛撫したいがために相手を人事不省に陥らせるのはおかしなことだし、認めたくはないが屈折した変態性欲のにおいもする。けれども正気の飛段を相手に恋人同士のような行為をするなど角都の矜持が許さない。俺はS級犯罪者なのだ、人間らしい感情など捨てて生きてきた、今さらこんなションベン臭い愚かなガキにまともなキスなどできるか!そんな熱い思いとは裏腹に角都の手のひらは飛段の肩や腰を柔らかく撫で続け、唇もしかるべき場所に押しあてられている。厄介なプライドは飛段とともに眠っていて、角都の楽しみを妨げるものは今のところ存在しない。
















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