悟った、ような気がした

2010.03.22 TEXT

さくま様からのリク「ヴィーナスとニニ」による小話です。「ニニとは理想化されてない俗物の女性像らしいです」との説明もつけてくださってありがとうございます、さくま様。全然知りませんでしたので勉強になりました^^すてきなリクをありがとうございました!





気持ちがくさくさしていた角都は乱暴に飛段を抱き、一過性の快感を得ると、まるで風呂からあがるように相手から身を離した。うわごとに似た呻き声が、狭く安っぽい寝台に転がった人体から切れ切れに漏れている。自分の鬱憤晴らしに協力的ではなかった飛段に意趣返しをするため角都が幻術を入れたのだ。奇怪なものにいたぶられ犯されているはずの飛段は初めこそ嫌悪をあらわにしたが次第に反応を見せ、今では股間をぬかるませて太腿をだらしなく開いている。架空の夢魔に攻めたてられ精液だけではなく妙な声まで垂れ流す相棒を観察するうち、角都の苛立ちは別の感情にすり替わっていくが、当の角都はそれに気づかない。上体を寝台から半ばずり落とし、四肢を小刻みに震わせていた飛段は、やがてひきつけるように喘いで静かになる。緩く曲げた膝が左右に倒れ、股がさらに広く開かれる。期待以上の光景に角都は暗く興奮する。血色を帯びた体は敷布の上でくねったまま次の凌辱を待ち受けているふうなのに、口がぽかりと開いた無表情な顔はいかにも死んでいて、片腕と共に寝台の縁から逆さにぶら下がっている。この不調和には見覚えがある、と角都は考え、思い当る。殉教者の聖画だ。崇める対象なのに淫靡で、扇情的なのに静謐で、死んでいるのに永遠に生きているあれ。自分の解釈に満足した角都は不機嫌に取って代わった上機嫌に任せ、聖と性と生と死が混じり合った存在に改めてのしかかり、硬化した手指や性器で相棒のあちこちを刺し貫いて、活人画にさらに性と死の要素を付加していく。性がなければ聖もなく、死がなければ生もない、同じく苦痛がなければ法悦もないだろう。混沌こそ完璧。温かい血まみれの内臓の中で達しながら、角都はそんな身勝手なことを考えたのである。
















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